[書評]100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者の光と影

NHKスペシャルの本は大体にして面白く、今まで外れたためしがありません。この本はたまたまKindleでセールになっていたので、安心して買って見たところ、期待を上回る面白さでした。タイトルは漠然としているので、タイトルから本書の具体的な内容を読み取ることは数学に詳しいか超能力者でもない限り不可能ですが、これは、有名なポアンカレ予想を解いた数学者グリゴリー・ペレルマンの話です。


100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影
NHKスペシャル
春日 真人

今回はこの本を紹介するとともに、数学の面白さを紹介したいと思います。

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ポアンカレ予想とは

ポアンカレ予想とは、ものすごく単純で、

単連結な3次元閉多様体は3次元球面 S3 に同相である

という事です。これは、いわゆる、簡単そうで全く分からないという良い例ですね。この本によるとこれを凡人にも分かるように言い換えると、

宇宙の中の任意の一点から長いロープを結んだロケットが宇宙を一周して戻って来たとする。ロケットがどんな軌道を描いた場合でもロープの両端を引っ張ってロープを全て回収できるようであれば、宇宙の形は概ね球体である(ドーナツ型のような穴のある形、ではない)と言えるのではないか、というのが(3次元)ポアンカレ予想の主張である

となるそうです。つまり宇宙は、ドーナッツ型のように真ん中に穴が空いていて、そこに行くことはできないなんて事はなく、球体か立方体かは分からないけど、ちゃんと穴が空いていない空間ですよ。というだけの事です。これを予想したのが、ポアンカレ予想です。これを100年間も幾多の数学者たちが追い求めてきて、ようやく説いた数学者、グリゴリー・ペレルマンを追うというのが本書の趣旨です。

トポロジー(位相幾何学)とは

このポアンカレ予想の基になっている学問はトポロジー(位相幾何学)という学問で、この学問がすごく面白い(実際に習うと訳が分からないのですが)ので、紹介します。

トポロジーでは、ドーナッツとマグカップは同じ形だとします。理系でない方は、「ん?」と思う方が大半だと思いますが、種を知ってしまえば、納得できます。要するに大事なのは穴の数なのです。マグカップは取っ手が穴になっていますし、ドーナッツも穴が1つだけ開いています。ということはトポロジーの世界では同じ形なのです。これは穴が一つの例ですが、0個の例で言うと、球体やワイングラス、もっというと人間だって同じ形ですね。(ピアスを開けた時点でドーナツと同じ形になりますが。。。)穴二つの例は、レンズなし眼鏡ということになります。

この考え方で言うと、宇宙はワイングラスなのか、マグカップなのか、それともレンズなし眼鏡なのか、を証明することがポアンカレ予想なのです。例えば宇宙がドーナッツのような形だったとしましょう。そしたら穴の部分が引っかかってしまって、ロケットに付けられたロープは回収できないですよね。こんな事はないという予想がポアンカレ予想なのです。

この難問を解いたグリゴリー・べレルマンの変人っぷり

この解けそうで解けない超難問に100年間も数学者たちは苦しめられてきました。そしてとうとうこの問題を解いたのがグリゴリー・べレルマンです。この天才数学者について、「100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者の光と影」を読めばその変人っぷりが分かるのですが、ここではその一握りを紹介します。

まず、このポアンカレ予想を解いたという偉大な業績により、べレルマンは数学のノーベル賞とも言われているフィールズ賞(メダルと1億円)を受賞することになります。ですが、なんということかこれを辞退してしまうのです。彼は決して裕福だったわけではなく、むしろ大変貧しい生活だったようです。彼が勤めていた研究所では給料の振り込みが一日遅れただけで、経理に文句を言うほどだったようです。そんな彼が1億円もの報酬を辞退したという事は、何か特別の理由があるのでしょうか?そんなお金に困っていたべレルマンですが、自分が関わってないPJの報酬が振り込まれると、それを返却したようです。つまり、もらえる金額とは関係なしに、自分の功績の対価のみをもらうというのが彼のポリシーで、それに忠実に行動しているというだけなのですね。

彼はトポロジーの問題のポアンカレ予想を、微分幾何学、熱力学などの多岐にわたる方面からのアプローチで解きました。それぞれの分野の先駆者たちがいて、それを組み合わせてべレルマンが解いたという事実が、彼のみが表彰されるのを拒んだ理由なのでしょうか。。。

彼はいま、サンクトペテルベルグに身を隠すように生活しています。そのため今となっては誰もその理由を知ることが出来ません。そんな謎に満ちた数学者を追うドキュメンタリー形式の本ですから、面白くないわけがありません。数学が苦手でも、興味がある方にお勧めの本です。是非読んでみてください。

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