バグダッド・カフェ カルト的人気の尖った映画の意味を(勝手に)解釈

今回紹介する映画は1987年に西ドイツで制作された映画です。歴史を見てみるとベルリンの壁の崩壊が1989年ですから、この映画は崩壊前に制作されたものです。そんな古い映画ですが、今なおカルト的人気を持っています。

今回初めてこの映画を見ました。それが、思っていた以上にとても面白かったので紹介したいと思います。色々な見方がある映画だとは思いますが、自分なりに、この映画を小説的な読み方で見てみたいと思います。

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あらすじ

まずはいつも通りにWikipediaからあらすじを引用したいと思います。

ドイツはミュンヘン郊外、ローゼンハイムからの旅行者ヤスミンは、アメリカ旅行中に夫と喧嘩をし車を降りてしまう。彼女は重いトランクを提げて歩き続け、モハーヴェ砂漠の中にあるさびれたモーテル兼カフェ兼ガソリンスタンド「バグダッド・カフェ」にやっとの思いでたどり着く。いつも不機嫌な女主人のブレンダ他、変わり者ばかりが集う「バグダッド・カフェ」。いつも気だるいムードが漂う中、ヤスミンが現れてから皆の心は癒されはじめる。あの不機嫌なブレンダさえも。そして二人はいつしか離れがたい思いに結ばれていくのだが……。

あらすじだけ見ると、ごく一般的な物語のように見えますが、映像は尖りまくっています。主題歌のCalling youがすごく素敵です。全く雰囲気と合っていない箇所もありますが、とにかく映画の中でこの曲を流しまくり、見終わった後には忘れられなくさせてくれます。

対照的なふたりの主人公

この映画に出てくる主役はふたり。ひとりはブレンダ、もう一人はヤスミン(ジャスミンのドイツ読み)です。おそらくこんな人はいないだろうと思うほど特徴的に尖らせて描かれています。最初の方の場面でブレンダは数十分間怒り狂います。何かがあるたびに怒鳴り散らし、異常なほど周囲に牙を向きます。この場面で私は、この映画はきっとストーリーとして映画を見るのではなく、比喩的に見てくれとのメッセージなんだと私は受け取りました。

ブレンダの性格

ブレンダはとにかく感情を周囲に放ちまくります。それも、その全てが怒りです。自分が世界の中心で、その周りを自分が動かしているのだと思いこんでいます。そんな彼女のまわりに集まるのは受け身な人ばかり。世界の中心である彼女は重力の中心であり、彼女のまわりには程良い重力をもった人々だけが程良い距離感を保って公転しています。ですので、彼女の言う事が聞けない人は彼女のもとを去っていきますし、旦那もその一人です。

ヤスミンの性格

ヤスミンはとにかく受け身の性格。そしてとにかく感情を表に出さない面で尖っています。何を考えているのかが本当に分からない。存在で物語るタイプの人がいますが、彼女はそんなタイプでもなく、まるでどこか違う世界を生きているかのようです。

彼女は一人で世界を形成することができず、誰かのもとにいるしかありません。映画の始まりには旦那と一緒に旅の途中でしたが、一念発起し、旦那という銀河系を飛び出て、ブレンダという新たな恒星を見つけた彼女はしばらくブレンダのまわりを公転します。

象徴的なサブキャラクターたち

ブレンダとジャスミンだけではなく、この映画には象徴的なキャラクターが数多く出てきます。その中でも何人かを紹介しておきます。

ハリウッドこぼれ風のぺインター

(この映画が作られた年代を考えても)なんだか古臭い感じの恰好をしているおじいさんがでてきます。最初はハリウッドから来たといっていましたが、実は俳優では無くて画家です。彼はバグダッドカフェの近くのトレーラーに住んでいて毎日バグダッドカフェにやってきます。

彼はきっと寂れた世界の象徴として出てきます。物語の始まりにはバグダッドカフェに一番通い詰めていました。彼が通うバグダッドカフェは、カフェ自体が寂れているように思えます。ヤスミンがマジックを披露するにつれて店がだんだんと繁盛してきますが、それに連れて彼の存在感も薄れてきます。

自分は画家である事をヤスミンに明かした後は、彼女をモデルに肖像画を書き始めます。最初は厚着しているヤスミンですが、だんだんと薄着になっていき、最期にはおっぱい丸出しになります。こんなところにも、徐々に心を開いていく様子の比喩表現が使われています。

ファッションに異常な興味を示す娘

ブレンダの娘は、ファッションに以上に興味があり、着飾った姿で鏡の中に移った自分ばかり眺めています。服は好奇心の象徴です。

ドイツのローゼンハイムからやってきたヤスミンは(アメリカ人からしたら)風変わりな服ばかり持っています。彼女がある時、ヤスミンから服を借ります。全く異なる分化に最初に興味を示したのは若い娘でした。

周りがヤスミンの事を変な人と見る中、娘は服を借りることで分化の交流をし始めます。それにヤスミンは反応し、交流を始めます。

ブーメランばかり投げている青年

ある時から、バグダッドカフェの近くにテントを張って生活をする青年が現れます。旅をしている風なのですが、彼はテントを張った場所から一向に動かず、毎日バグダッドカフェに通っては外でブーメランばかり投げています。

彼はきっと繰り返しの象徴です。

彼の投げたブーメランが石油タンクに当たって、戻って来なくなったときには、繰り返しの毎日が終わったことを表しています。

ブレンダと相談して決めるわ。の意味

この映画を語るうえで外せないのが、最後の終わり方。ヤスミンは一度、グリーンカードを持たない旅行者用のビザで働いていたことにより、強制的にドイツに返されます。しかし再度旅行者用のビザで再びアメリカに来たのです。前回の滞在でヤスミンに心を惹かれていたハリウッドこぼれ風のぺインターは、ここぞとばかりに、ヤスミンにプロポーズをします。

アメリカ市民(つまり僕)と入籍すれば君もグリーンカードを持つことになり、つまり、ずっとここ(バグダッドカフェ)にいられる。

ヤスミンも心を許していたので、とても断る場面ではないのですが、ヤスミンの答えはというと、
ブレンダと相談して決めるわ。

とても謎めいた言葉で返し、そしてここでエンドロールが流れます。普通、プロポーズの言葉にこんなアンサーを返す人はいませんが、この最後の一言のセリフで映画全体がひっくり返るようなインパクトがあります。

わたしはこのセリフをこう取りました。例えば、ブレンダとヤスミンが一人の人間の能動的な部分と受動的な部分として描かれていたらどうでしょう?何事も他人は無視で自分の思う通りに行動するブレンダと、感情がなく(ほぼ)全てを受け入れるヤスミン。それが一人の人間だとしたら、納得がいきます。

あなたは受動的な私だけしか見ていないけど、能動的な部分もちゃんと見てよね。結婚とはそういうことなのよと。

人によってこの最後の一分の捉え方はそれぞれだと思いますが、この最後の一場面が、バグダッドカフェという映画を古典映画の一つにしていることは確かです。

まとめ・この映画が伝えたかったこと

最後に、まとめとして、この映画を総評して終わりましょう。

このバグダッドカフェという映画、実は原題はOut of Rosenheimと言うんですね。日本公開された1989という年は、日本は世界を”アメリカというフィルターを通して”見ていた年です。今もそうかもしれませんが、この時はそれがもっとひどく、ドイツの文化がアメリカを経由して日本に入って来ていたのです。そのせいでおそらく日本での公開時もBagdad Cafeという名前を使ったのでしょう。

注目すべきは原題の意味です。Out of Rosenheimつまりローゼンハイム(ヤスミンの出身地)の外という意味です。ローゼンハイムが何を象徴しているのかが分かれば、この映画が伝えたいことが自然と見えてきます。

私は、ローゼンハイムというのはヤスミンの事を、一人の人間の受動的な部分と受け取りましたから、つまりその出身地のローゼンハイムというのは、自分を覆っている表面の部分。自分が世の中と接している部分の事だと思います。それが能動的な部分、つまり自分のエゴというかコアな部分に出会うというのがこの物語の筋でしょう。

ローゼンハイムの外、つまりそれは自分の内側の事。これが原題のタイトルだとしたら、まさにこの物語は、能動的な自分が本来の自分に出会う自分探しの物語に他なりません。

これは私が、こう読んだというだけで、本当に作者が意図して描いたかどうかはわかりません。ですが、本の例えで言えば、いろいろな解釈が出来る本が古典として語り受け継がれます。この映画もいろいろな解釈が出来るように作られているところを見ると、一つの古典となり得る要素はあるといえるでしょう。あとはもっと多くのファンがこの映画の批評をして、語り継いでいく事になれば、この映画はもっと幸せです。なぜなら、古典というのは作者が作るものではなく、読者が作るものだからです。

村上春樹は、小説家は本当に書きたいことは書かない、隠して書くと言っています。この映画を通して本当に言いたいことは何なのかそれを考える事がこの映画を見る事の面白さです。

さて、如何でしたでしょうか?

今回、日曜の昼下がりにこの映画を見た後、見るだけではなく自分の頭で思考する時間が必要だと思い、即座にジムに行き、走りながら考えていたらこの結論に達しました。見っ放しで終わる映画が多い中、このように考えさせられる映画は、純粋に楽しいです。

GooglePlayやiTunesでも借りられます。iTunesのリンクを貼っておきますので興味ある方は是非どうぞ。

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