君はアルフォンソマンゴーを知っているか?海外在住者がちょっと得する物語。

「あぁ、なんてマンゴーってこんなに美味しいのだろう。」

その日わたしはベランダで、花切りのマンゴー、つまり角切りの果実が薄皮にびっしりと詰まって広げられたマンゴーをフォークで一切れずつ口に運びながら、朝から降り続ける雨をじっと眺めていた。

自然界の偶然が積み重なってこんなに美味しいものが出来上がったのか。それとも人間の味蕾がこの果物に合うように進化を遂げたのか。いずれにしろ今この口の中で完璧なマッチングを見せている味蕾と果実。なんで自然界にこんなに完璧な「味」というものが存在できるのだろうか。その自然界にある「味」が完璧だとしたら、世界中に多くいる料理人というのは、自然界でどういった位置づけなのだろう。完璧なもの以上を作ることは出来るのだろうか。

マンゴーの味に知的好奇心を覚えてしまった私は、ついには自分の頭の中だけでこの好奇心を抑えることができなくなり、他に拠り所を探さざるを得なくなる。

「よし、Wikipediaで調べてみよう。」

マンゴー(檬果、芒果、学名: Mangifera indica)は、ウルシ科マンゴー属の果樹、またその果実。菴羅(あんら)、菴摩羅(あんまら)ともいう。マンゴーの栽培は古く、紀元前のインドで始まっており、仏教では、聖なる樹[1]とされ、ヒンドゥー教では、マンゴーは万物を支配する神「プラジャーパティ」の化身とされている。

ほぉほぉ。インドではマンゴーは”万物を支配する神「プラジャーパティ」の化身”なのか。

どおりで美味しい訳だ。万物を支配している神の生まれ変わりがマンゴーであるならば、今この瞬間、私の口に合わないものが出来上がる筈がない。もっと、インドのマンゴーについて調べてみよう。おぉ、ちゃんとインドのマンゴーについての記述も詳しく載っているじゃないか。ふむふむ。

インドは世界最大のマンゴー生産国。年間収穫量は約160万トンで、世界各国に輸出する。 4000年以上前から栽培が始まっており、現在では500以上の品種が栽培されている。 マンゴーの王と呼ばれるアルフォンソ・マンゴーは、3月から5月にかけて実り始め7月頃に終わる。甘く特有の香りがある。雨期の数ヵ月前に数日間雨が降り、その雨により一気に熟する。この雨をマンゴー・レインと呼び、デカン高原では4月中旬から5月初旬に降る。雨期が始まる6月中旬で、アルフォンソ・マンゴーの季節は終わる。デーヴガル産のアルフォンソ・マンゴーが最高だと言われ、実が大きく味が濃い。2006年より条件付で日本への輸入が解禁された。現在輸入できる品種はアルフォンソ種・ケサー種・チョウサ種・バンガンパリ種・マリカ種・ラングラ種である。

、、、マンゴーの王と呼ばれるアルフォンソ・マンゴーは、、、(中略)、、、雨期が始まる6月中旬で、アルフォンソ・マンゴーの季節は終わる。

、、、6月中旬で、アルフォンソ・マンゴーの季節は終わる。

、、、6月中旬で、、、、終わる。

ふと携帯電話を見ると、今日は6月4日。

「今しかない!!」

私はその足で、インド人が密集するリトルインディアエリア。その中枢にあるムスタファセンターに急いだのであった。

(この物語は全てフィクションです。)

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2016年6月4日15:00@ムスタファセンター

万物を支配している神の生まれ変わりがマンゴーで、アルフォンソ・マンゴーは、マンゴーの王と呼ばれる。つまり、アルフォンソマンゴーは、万物を支配している神の中の王。これは凄い事になってきた。ムスタファセンターに行く途中も、興奮が隠し切れず、今思い返しても鼻息がフンフンしていたと思う。とにかく、私はムスタファセンターに到着した。

alfonso (1)

いつものゲートだ。問題は、果たしてここにアルフォンソマンゴーがあるのか?だ。Wikipediaによると、6月中旬でアルフォンソ・マンゴーの季節は終わる。

原産国はインド。とすれば、間違いない。向かう先はここ、ムスタファセンター以外にあり得ない。自分を信じて果物コーナーに向かった。

「あった!」

alfonso (2)

なんと、AlphonsoMangoと書いてあるではないか。Wikipediaで調べた神々の世界の話が、突如目の前に現れて、私は当惑した。こういう時、目を拭ってもう一度見るほか方法はない。

alfonso (2)

やっぱり、アルフォンソマンゴーと書いてある。[India]とまで書いてある。アルフォンソマンゴーの季節に間にあった安堵とともに、私をこのタイミングでWikipediaまで導いてくれたシンガポールの雨に感謝し、私は現実に戻った。

キングの中のキングが収まったラックの中から、さらにキングを探し出そうと格闘したが、所詮は人間。それは分からない。適当に3つ買って帰った。これが4日の昼下がり。

2016年6月4日18:00@自宅

その日、ムスタファセンターから帰った私を、打ちのめすような発見があった。それは、「追熟が必要」という気づきだ。てっきり私は、アルフォンソマンゴーを買って帰ったら、その日のうちに切って、そのまま食べれるものだと思っていた。だけど、そればかりはしょうがない。認めるしかない。今日は食べれない。

今出来ることは何だろう。今出来ることをしよう。それはブログ用に写真を取ることだけであった。私は愛でるように写真を撮った。(コンデジで。)

これが、キングオブキング。アルフォンソマンゴー。思ったより小振りな果実。

alfonso (3)

赤、黄、緑のラスタカラーがとても美しい。One love~ One Hert~と思わずボブマーリーを口ずさんでしまう。

alfonso (5)

暗くするとイマイチだなぁ。

alfonso (4)

明るくすると、もっとイマイチだ。

alfonso (6)

その後数時間、時間も忘れて、近い将来食べるであろうマンゴーの王を想像しながら、写真を撮り続けるのであった。

2016年6月8日23:00@自宅

この日、追熟が進んでいることを確認し、冷蔵庫に入れる。

アルフォンソマンゴーを購入してからというもの、家にいない時間帯は不安でしょうがなかった。もしも追熟が進行しすぎて、家に帰って来たら腐っていたらどうしよう。来年の6月まで待つのは(精神的に)不可能だ。今回のチャンスを逃しては行けない。そんな思いで過ごしてきた。だが、そんな日も今日で終わる。全てのアルフォンソマンゴーは冷蔵庫に移した。

あとは万全の態勢で食べるのみである。

2016年6月11日21:00@自宅

ついに週末がやってきた。

この日、夜の早い時間までに生活の全てを済ませ、残りの時間は全てアルフォンソマンゴーに捧げることに集中した。そして今、それを実現した。私の前には1つのアルフォンソマンゴー、そしてアルフォンソマンゴーの前には私一人。

何の心配もないまま1対1で対峙する。これで後悔はない。私は、恐る恐るナイフを入れた。

alfonso (7)

驚いた。外は少し緑がかっているが、中は完熟。それも、今までに見たことがないくらい位に実の〔密度〕が濃い。ナイフを1ミリ進めるたびに、繊維同士、そしてそれに群がる実同士が、お互いに離れたがらないのが良く分かる。これほどまでに〔収束〕したマンゴーは見たことがない。

私はナイフを進めた。

alfonso (8)

マンゴーと言ったら花切り。生憎私はそれ以外の選択肢を持ち合わせてはいないが、恐らくこれが最良の切り方であろう。ここで私は再度驚愕した。この小振りな果実(実にフィリピンマンゴーより小さい位なのである!)からは想像も出来ないほどの輝き。1ブロック毎の、艶やかに切り立つ果実のひとつひとつが、私には神々しく感じた。これぞ、キングオブキング。これで美味しくないはずはない。

いつまでも眺めていたかった(実際、そのまま眺めていることも出来た)のだが、私は一度大きく首を振って、自分を現実に呼び戻した。

一週間前に、あの雨の日にベランダでマンゴーを食べてから、ようやくここまで来た。完璧だと思っていたものより、さらに上があると知ってしまったあの日から、とうとうここまで来た。今、私はキングオブキングと対峙している。そう思うと、自然と震えは収まった。

最初の一切れを口に運ぶ。

その瞬間、私は笑みがこぼれた。ここまでずっと張りつめていた何かが、全ての私の行動が間違っていなかったことを、味蕾を通して全身で理解したからだ。

「うまい。。。」

ようやく私はこの言葉を口にした。王様の中の王様と呼ばれるその果実は、実感とともに腹の底にストンと落ちた。完璧であるのに理由なんかないんだ。旨いものは旨い。その時、一週間前の自分の考えがちっぽけに感じた。

謝辞

さて、如何でしたでしょうか?冒頭にも書きましたが、この物語は全てフィクションです。いつもブログを書く時、一行目を書くと、その流れでスルスルと最後まで行ってしまうのですが、今回は一行目で(ちょっとだけ)横に行ってしまったため、その後も(ちょっとだけ)横に行き続け、最終的には異色のストーリーになってしまいました。ちょっとやりすぎたかな、と書き終わった後に思い、消すことも考えましたが、結局そのままアップしました。いつもと違った雰囲気が自分なりに好きで、こういうのもいいんじゃない?と持ち前のポジティブさが〔公開〕のボタンをクリックする一押しになってくれました。楽しんで頂けたなら幸甚です。

PS1:アルフォンソマンゴーについては全て友人から聞き、一緒に買いに行こうと誘われました。友人について行って、私も買っただけです。勝手に話を変えてしまいすみません。

PS2:日本でこのマンゴーが手に入るかどうかはよく分からないですが、国民の8%を印僑が占めるシンガポールで、このマンゴーが手に入りやすいことは事実です。

PS3:この物語の舞台はシンガポールですが、日本にも美味しいマンゴーがあります。是非、お試しを。



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